レポート《じっくりとみんなでつくる短歌deダンス@横浜STスポット》プレ企画#1ワークインプログレス 上演+トーク 

《じっくりとみんなでつくる短歌deダンス@横浜STスポット》プレ企画#1ワークインプログレス 上演+トークが無事に終演しました◎ご来場いただいた皆さま、どうもありがとうございました。
共同リサーチ仲間の飯塚大周さん、松本奈々子さんと共に6月から始めた横浜の街歩きのリサーチ体験を元に制作中の“短歌deダンスシリーズ”新作ワークインプログレスの上演(約45分間)と、上演のフィードバックやリサーチ内容の紹介など観客を交えたトークを行いました。
今回の上演を通して観客の方々と作品の生の時間と空間を共有する中で、からだで受け取った新たな問いや発見がたくさんありました。またトークでは、観客の方々が上演を観て感じたことや問いについて直接言葉を交わすことができ、作品が他者にひらかれる中で耕されてゆくような実り多き時間となりました。

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公演概要

日時:2021年9月29日(水)19時


会場:STスポット


出演・振付・演出・短歌:涌田悠


共同リサーチ・音楽・演奏・音響:飯塚大周(チーム夜営 / オフィスマウンテン / KCN)
◆上演内使用楽曲 飯塚大周作『あなたを巡る』・『川へ生まれ続けた』


共同リサーチ・テキスト:松本奈々子(チーム・チープロ)
◆上演内使用テキスト 松本奈々子作『サボテンの根とからまる』より抜粋

協力:STスポット
助成:横浜市文化芸術公演等支援プログラム
web広報:犬飼勝哉
主催:涌田悠企画

当日配布資料① リサーチ資料【それぞれのからだで街の風景に触れる・味わう】

https://1drv.ms/b/s!AmV3kSbyONJzgwOXwPs3SicDumaq?e=zeyWZj


当日配布資料➁ 涌田悠新作短歌作品7首

https://1drv.ms/b/s!AmV3kSbyONJzgwa152p6KZmkZIim?e=tzuRW6

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あじさいにふれるてのひらふつふつとだれの臓器にふれられている


マンホールに耳おしあてる  はつなつのあなたを巡る音のない音


欄干に立つ両足のあいだからわたしは川へ生まれつづけた


                                      

( 涌田悠新作短歌作品7首より)


横浜の街歩きのリサーチでは【それぞれのからだで街の風景に触れる・味わう】ことにフォーカスし、3人それぞれのからだの視点からの味わいや発見を共有・交換する体験を積み重ねてきました。
新作ワークインプログレスではそれらの体験から制作した涌田悠の新作短歌、飯塚大周さんの楽曲、松本奈々子さんのテキストを基盤に、からだと言葉と音を通してSTスポットに街の風景の記憶や予感、そして新たな風景を立ち上げることを試みました。

飯塚さんは今回、ギター演奏・音響としても作品に関わってくださいました。街歩きの体験と私の短歌を元に制作された楽曲 『あなたを巡る』・『川へ生まれ続けた』 の生演奏によるダンスとのセッションや、フィールドレコーディングで録音した街の風景の中にある様々な音を使用した音響を通してシーン作りを共に行いました。
リサーチの中で飯塚さんを中心に行ったフィールドレコーディングでは、街の風景の中にある様々な音ー陸橋の上・高架下・線路脇の道など様々な場所から聞く電車の音、路地のマンホールの底を流れる水音、人々が行き交う橋の音、堤防を降りて寝転んで聞いた川の音etc…ーに改めてからだを澄ましてみるという体験をしました。飯塚さんと共有した「ひとつの場所に混ざり合っている無数の音を耳だけでなく、からだで受け取っている」という発見や、普段は漠然と聞いている風の音や、川を流れる水の音、電車のガタンゴトンという走行音がどのように発せられているのかについて改めて細分化して考えてみるという飯塚さんの視点から、街の音への触れ方や味わい方が豊かになるヒントをもらいました。これらの体験は作品の中でも、からだと音、短歌と音の関係をより繊細に深めてゆくことへの手掛かりになっています。

松本さんは3人で一緒に街を歩いたとある日のリサーチ体験からテキスト『サボテンの根とからまる』を執筆されました。松本さんはリサーチの中で、風景の中にあるものたち(三角コーン、ガードレール、道路の標識、植物、道そのもの、などなど)を擬人化したり、からだでコミュニケーションを取ったり、想像の中でストーリーを膨らませながら歩くという視点をシェアしてくれましたが、今回執筆されたテキストにもその独自の視点により現実から奇妙な姿勢で予想もつかない場所にジャンプするような一筋縄ではいかない味わい深い世界が繰り広げられています。松本さんの視点を持って街を歩き始めてから、風景の中にあるものたちにからだや心が分散されていくような、自分のからだと風景の境界線が曖昧になるような感覚を発見しました。私は今回自分の作品の中で初めて他者のテキストにからだで触れてみることに挑戦していますが、自分のからだの内側にはなかった感覚にぶつかってみることで予想の付かない場所に連れていかれたり、新たな風景が立ち上がりそうな予感にワクワクと恐怖の両方を覚えながら、ひとつひとつの言葉に出会っています。


今回、 <からだが世界に触れること・触れられること>をキーワードに創作を始めた背景には「言葉や踊りが私個人のからだを超えて世界や他者と繋がることはできるのか」という大きな問いがあります。
言葉やからだを通して街の風景や他者の感覚に触れる体験を深めていく中で発見した、自分のからだと世界との境界線が変容していくような新たな感覚は、この問いに触れるなにかに繋がる予感がしています。
11月・3月の上演に向けてその感覚をさらに深めてゆくと共に、 その先でもう一度私個人のからだや言葉に出会い直してみたいと感じています。 短歌・テキスト・音が私のからだを通してどのように互いに作用しながら響き合い、新たな感覚や風景を生んでいくのか模索を続けています。
先の見えない道中で、どのような風景に出会えるか楽しみです。

涌田