相鉄線を産む


2021.6.17

STスポット周辺の街を歩いていても海の匂いは感じられませんが、横浜市西区一帯は江戸時代中頃まで『袖ヶ浦』という美しい内海が深く入り込む浅瀬だったそうです。富士山大噴火の降灰による湿地帯を利用した新田開発や、鉄道の敷設工事による埋め立てなど、様々な時代の街の姿を経て徐々に今の姿になっていったようです。今は海の面影のない住宅街やビル街を、海の底を徘徊する魚のような気分で歩いてみると楽しいです。

私がこの日、立ち止まって過ごした浅間下歩道橋付近(当時の芝生村)は、1859年の開港の際に東海道と開港場の横浜村を結ぶために作られた『横浜道』の起点でした。
歩いていく先々で、ふと昔の景色と今の景色の重なりを感じる場所に出会うと、からだが二重の時間に同時に触れているような感覚になります。


この日の私のだいたいの軌跡↓

浅間下歩道橋の上で車を見下ろし、浅間下公園で子どもと一緒に水溜まりを覗き込み、新田間川と帷子川を横切って、相鉄線平沼橋駅の陸橋の上で電車を見下ろし、平沼水天宮に立ち寄り、石崎川沿いの道を歩き、扇田橋、西平沼橋、平戸橋などたくさんの橋の上で過ごし、京急高架下で電車の音を聞き、平沼商店街で焼き鳥の匂いを嗅ぎ、逃げない鳩に出会って帰路

【今日の私のからだで触れた風景の味わい】


◎歩道橋の上で立ち止まり走る車を見下ろす(浅間下歩道橋)

・歩道橋の上で立ち止まり、足の間を走り抜ける車を見下ろしてみる
・車の進行方向によって変わるからだの感覚の違いを味わう
・車がからだの正面から走り抜けるとき→車が次々とからだ(お腹の中?)を貫通してゆくような感覚
・車がからだの後ろ側から走り抜けるとき→自分の足の間から車を次々と産み出してゆくような感覚

◎水溜まりに映る景色を覗き込む(浅間下公園)

・水溜まりを覗き込み、そこに映る空や雲の色、木の枝葉、鉄棒、自分の顔をじっと見つめてみる
・水面に映る景色が風によりさざ波立ち、くずれつつ揺れて、また静まってゆくまでの時間を味わう

◎陸橋の上で立ち止まり走る電車を見下ろす(相鉄線平沼橋駅)

・歩道橋の上でやったように、今度は足の間を走り抜ける電車を見下ろしてみる
・電車が走行音と共にからだの中を貫通して走り抜けてゆく感覚、長い電車を足の間から次々と産み出してゆく感覚、車との感覚の違いも楽しんでみる
・電車の路線の種類や、普通、急行、特急などによる感覚の違いも味わってみる
・電車の起こす風が足の間から頭のてっぺんまで吹き抜けてゆくのを味わう


◎高架下で電車の音を浴びる(京急線高架下)

・高架下に立ち、頭のてっぺんから降ってくる電車の音をからだ全体で浴びるように聞いてみる
・足の裏から伝わる電車の振動も同時に味わってみる


◎鳩のまばたきを数える

・逃げない鳩に出会ったら、近くでじっと見つめてみる
・鳩はよく見るとまばたきをしていることに気付く
・鳩が飛び立つまでにするまばたきの回数を数える(13回)

涌田