涌田悠第二歌集
泣きながら笑ってるのは誰ですか?お天気雨がふってきました
シャーペンの芯をさし込む、ささやかな動き連なり人生となる
ほんとうはなんにもしたくないけれどそういうわけにはいかないらしい
ああやはりあなたもですかこんばんは、トイレで泣いたことのある人
終わらないけどいつまでもサビの来ない歌みたいだねぼくらの日々は
どうしようもないことはどうすればいいどうしようもなくお湯を沸かした
三分後のわたしが麺をすすること信じてお湯を注いでいます
世界から2ミリ浮いてたあのころの低く四角い理科室の椅子
人生は短い だからいつまでもきみと雨宿りばかりしてたい
まばたきをするたびゆれる私だけ見える私のまつげの光
ポロシャツに縫われたワニがこわかった、こわいものなどなにもなかった
終点と知っているのにあえて押す〈降りますボタン〉のようなさよなら
きみを好きな理由ひとつもなくなって梅干しの種の真ん中のこる
唐突に気付いたここは足立区じゃなくて宇宙だここは宇宙だ
トイレットペーパーで涙ぬぐってるあなたの夜は明けなくてもいい