涌田悠第一歌集

漫喫の小さきソファは宇宙船よるべなさなどきらめく塵だ

飽きもせず洗顔フォームを泡立てて今日はなにかが起きる気がする

つり革も人も進行方向と逆に傾きすぐ戻される

パンパンの水風船がひしめいて満員電車だれも泣かない

近未来 汚れるはずの歯を磨きいつか死ぬけど毎日踊る

7枚で900円のパンツはき時給910円で働く

バイトのこと仕事と呼ぶ度なぜかしらわずかにねじれ続けるこころ

ぼくたちは黄色い線の内側に下がり生きてくことを選んだ?

ありふれた悩みを抱いて輝けよ薄雲がかる今宵の満月

踊りつつうつむいている客が見え自分の腹の音が聞こえる

二度とない今日の夕日は海に溶けふぁんたおれんじ飲み干すあなた

ぼくたちはディズニーランドではしゃげずに、あらかわ遊園に向かっています

アメ横を何往復もしてみても涌田悠から逃れられない

世界中なかったことにされてきた傷いっせいに光りだす夜

クレヨンのぜんぶの色を混ぜたよなこの気持ちには名前を付けない