あじさいと手のひらと内臓

今日からリサーチの様子を少しずつ記録していきます◎6月は【それぞれのからだで街の風景に触れる・味わう】をテーマに、からだと街の風景が触れる実感や味わい、発見を積み重ねることを共同リサーチ仲間の松本奈々子さん、飯塚大周さんと共に試しています。
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2021.6.5

リサーチ1日目は、街を歩いているときのからだの感覚や歩き方を観察しながら、一人で歩くことから始めてみました。
改めて私の街の歩き方を言葉にしてみるとこんな感じになりました。

〈からだに街の風景を映すように歩く〉

・からだ中にたくさんの瞳が付いているような感覚で、街の風景をからだに映しながら歩く

・目的地や目的は決めずに、からだが気になる方向へ進む(クラゲ、ルンバのような感覚) 

・からだが気になる場所、物、人、動物、植物、匂い、音などに出会ったら小さなことでも立ち止まってみる

・それをからだでじっくりと味わう(よく見る、聞く、触る、嗅ぐ、ただそこにいる、姿勢を変える、など)         

・味わったときに生まれた感覚を言葉にしてみる、言葉にならなければからだの感覚をそのまま持ち帰る

・味わったなと思ったらまた歩き出す

・いつでも休む、いつでも帰る

この歩き方は日によっても少しずつ変わってくると思いますが、ひとまずはこの歩き方をベースに街を歩くことを重ねてみることにします。

駅周辺のビル街から少し脇道にそれただけで、ふと街の表情や流れる空気の匂い・スピードが変わる感じがしました。高低差のある住宅街の坂を上ったり下ったり立ち止まったりを繰り返していく中で、肌と空気のあいだにある隙間が少しずつやわらかくなっていくような感覚がありました。自分の住んでいる街と似たような匂いの路地に入り込んだり、知らない人の家のポストに新聞が落ちる音や、夕暮れの誰かの部屋の椅子が軋む音など、生活の些細な音を聞いたりするうちに、自分のからだがどこにあるのか不思議な感覚になりました。


この日の私のだいたいの軌跡↓

STスポットを出てすぐの新田間川に架かる一之橋を往復し、あじさいの咲く新田間川緑地の小道を抜けて、浅間下交差点を超えて、南軽井沢町の住宅地で民家を取り壊す油圧ショベルに出会い、急勾配の宮ケ谷緑地を越えて、宮ケ谷公園のベンチで小学生が枝で戦うのを見て、さらに階段をたくさん登り、宮ヶ谷町の住宅地の行き止まりの道に迷い込み、浅間台で小さな犬に吠えられて帰路

【今日の私のからだで触れた風景の味わい】

◎あじさいに手のひらで触れる・触れられる (新田間川緑地)

・あじさいに出会ったら両手のひらで包み込むようにそっと触れ、じっとする
・手のひらがあじさいに触れている感覚と、あじさいに触れられている感覚を同時に感じてみる
・ざわざわした触感、重み、温度(今日のあじさいはひんやりとしていた)を手のひらで味わう
・その感覚が手のひらからからだの別の場所に移るまでじっとしてみる(今日は内臓に移った)
・あじさいはよく見ると風がなくても微かに震えている
・あじさいはずっと見ているとなにかの臓器のように見えてくる

◎油圧ショベルが知らない人の民家を壊していく音を、立ち止まって聞く(南軽井沢町の住宅街)

・テレビ台、椅子の背、台所のシンク、植木鉢、壁、床、天井、知らない人の生活が油圧ショベルのフォークによってごちゃまぜに壊されていく音を立ち止まってしばらく聞いてみる
・さまざまなものが混じる音のひとつひとつが、耳だけでなくからだの色々な場所に響くのを味わう

◎道の途中の中途半端な地点で止まる(坂や階段をたくさん登った先の宮ヶ谷町の住宅街)

・行き止まりの道の途中の中途半端な地点、家と家のあいだ電線の下、用事もないのにじっと止まってみる
・道の中途半端な地点で止まることの止まりづらさやからだの違和感を味わう
・その止まりづらさがなくなるまで、たった今右手に触れている空気を、握ったり、放したりすることをただ繰り返してみる

◎マンホールの上に立ち、水の音を聞く (あらゆる道のマンホール)

・足の裏で、マンホールの下に流れている下水の音を聞いてみる
・地下に流れている見えない水の流れを想像してみる
・坂道のマンホールは水の流れが速い
・ついでにそこを泳ぐ河童の姿を想像してみる


涌田